最近のテレビ芸人

ここ最近、面白い芸人=売れるという本来あるべき正常な図式の復権を僅かながらにも感じられ良い兆しである。
一時期、ロンドンブーツ(当時のロンブー)を代表とする芸はともかく、今風な容姿を備えた芸人が異常にもてはやされた時代があった。この頃は、『容姿による既存の芸人像からの脱却』が一つの方法論であったのか!!とも思えるほど、小劇場に集まる女子中高生たちは、これらの今風なお兄さんを圧倒的に支持した。これは当時の彼女たちの笑いの基準がどうこうという事ではなく、彼女たちを取り巻いていた時代性によって影響された感性が、これらの芸人を支持したという事実に過ぎないわけであるが、結果として、これらの芸人は小劇場での動員数の高さをプロモーションに、テレビ局にフックアップされていった。そして、製作側は、彼らのスキルの低さを逆手にとり、試行錯誤の結果、電波少年を発端とした、これまでのタレント主導型の番組ではなく「ドキュメントバラエティー」と称される製作主導の企画ありきの番組フォーマットを発明し、つい最近まで、これらの芸人と共存共栄してきた。容姿さえそれなりであれば、企画次第で如何様にもなるという考え方がテレビ業界に蔓延していたように思える。
ドキュメントバラエティーも飽きられた現在、劇団ひとりだいたひかる等の良質な若手芸人が多数登場する「エンタの神様」やロバート・インパルス・ドランクドラゴンの成長が著しい「はねるのトびら」といった純粋に芸人のスキルを見せる番組が人気だ。そこに登場する芸人たちには芸で勝負している気迫が感じされる(かといって、容姿が悪いわけでは当然無く、各自好きな格好をしているわけだが、それが彼らの核ではない事が芸の質から感じられる)。特にエンタの神様は、各芸人のネタの質が番組の肝であり、製作側もキチンと面白い芸人を登用する事が高視聴率に繋がるいう図式となっており、これは芸人と番組制作側との関係性において、とてもよい循環と言えるであろう。
一時の芸人アイドル化現象を経て、ジャニーズがハゲヅラを付けてコントする昨今、大衆が芸人に要求するのは、テレビタレント的容姿ではなく、ストレートに腹を抱えて笑える何かである気配を、最近台頭してきた芸人からひしひしと感じ取れて、個人的にいい現象だと思える。この風潮がさらに浸透して、芸人は「芸」のみで判断する事が当たり前のようになればいいと思う。それが嫌であれば、芸人を辞めてテレビタレントと名乗るべきである。ギャルに街角インタビューする事が目的であるならば…。